2007-02-18から1日間の記事一覧

 ●「世間」を問い続けた、安部謹也氏最後の総まとめ!(余話)

ドイツ中世史が専門で、その研究と共に50年間、日本人である「私とは何か」を究極の命題として常に問い続け、日本と西欧の差異を観るのに「世間」という彼独自の視点を設定して「いかに生きるべきか」を見出した安部謹也氏の最後の総まとめともいうべき書…

 ●ガンバレ、中村文則クン!新作登場! (余話)

久々に中村文則クンが長編を書き下ろした。昨年は、文芸誌掲載の小説を批評家たちと共同で座談風にやっていたが、初期の志である精神の「闇」の「善悪」への追求は健在であった。その更なる掘り起こしの作品である。「最後の命」というタイトルで、「群像」…

 ●高井有一の40年後の作品に偶然出会ってしまった。

全く偶然のことだが、芥川賞第五十四回受賞の「北の河」(高井有一)を感想したばかりだったが、彼のその40年後の作品に一気にお目にかかることになった。全くラッキーな偶然である。「文学界」二月号の冒頭に「鯔(ぼら)の踊り」という新作短編が掲載さ…

 ●第五十四回は「北の河」(高井有一)

この作品を読みながらずっと感じ続けたことがある。それは、大抵の読者が、読みのどこから来るのか漠然と感じさせられつつも明確には掴めない、ある選別的な余韻、多少気取ったと言おうか、取り澄ましたとでもいうべきか、小説語りの独特な調子と言おうか、…

 ●第五十三回芥川賞作品「玩具」(津村節子)

芥川賞も50回を超えると開設以来30年近く経過することになる。石川達三などは、この賞を一回目で受賞し、後に選考委員となり、この段階でもまだ続けているのでデビューからずっと芥川賞まみれである。それに比べると、川端康成などは一回目からの選考委員で…