[文学*1171565285*[芥川賞全作品]●芥川賞受賞作品一覧

藤野可織の「爪と目」が加わりました。前回の「abサンゴ」に引き続き、難解さが増し、一筋縄では解読不能の作品が続いています。 まさに、文学復古の感があります。いったい審査員諸氏は何を考えているのだろうか?1935年(昭和10年)第1回 石川達三 「蒼…

 今回は文学談義を一休みして、山陰鳥取に出現したアザラシの「コヤちゃん」のことを紹介します。全国にまだあまり知られていないと

思うからです。 あの世ならぬ、この世から、珍しくもこの山陰の地でアザラシが出現しました。3月7日あたりから、目撃されはじめました。しかもそこは「池」なんです。池としては日本最大の 「湖山池」にです。池なのですが海跡湖で元は海の入り江、湾だった…

abさんご、難解さを解くヒント

今回、第148回芥川賞の受賞作品は、直木賞受賞者と読み比べてみるとおもしろいかもしれない。なにしろ、最年長(75)と最年少(23)の受賞だからである。また、作品も対照的である。 それはさておき、黒田夏子氏の作品を読むまえに、プロフィールで想…

”abさんご”読後感

幽玄の世界に彷徨い出る。物語は夢の断片を追うような気配。 覚醒時にも、過去を回想するときに伴う、映像と意味の不明瞭さがあるのとよく似ている。いずれも、映像に「色」はなく、情感のインパクトが強く残り、そのエネルギーが現実よりもより強力に残って…

 最近、わたしの音楽を聴く姿勢が昔と大きく違ってきた。

音楽を聴くといえば、わたしの場合は、レコード、カセット、CDを音源としてそれらを再声する機器にセットしてスピーカーを通して空間に音を放し裸耳で聞いた世代である。今でもこの名残はCDをCDプレイヤーで聴くという形で存在している。 パソコンとい…

 「皇帝」ベートーベン。

「最後の晩餐」というダビンチの絵画がある。この絵そのものは、まるで虱潰しのようにすみからすみまで研究解釈されつくされている。絵の中のテーブルにのっている料理はいったいどのようなものであったか、などというのもそれである。イタリア料理であろう…

野呂邦暢の「草のつるぎ」 

●「芥川賞作品全集第十巻」には以下の作品が掲載されている。「鶸(ひわ)」三木卓、69回、昭和48年上半期 「月山」森敦、70回、昭和48年下半期 「草のつるぎ」野呂邦暢 70回、昭和48年下半期 「土の器」阪田寛夫 72回、昭和49年下半期 「あ…

●第141回上半期芥川賞受賞作品「終の住処」磯崎憲一郎

マイノリティな私の感性からすると、いわゆるストレート達の夫婦というのは「このようなもの」ではないかと思うのである。このようなものとは言ってみれば決して人が羨むような夫婦生活、世間のいう典型的でおきまりの結婚後の男と女の仲、餅に描いた教条的…

「國文學」という雑誌がある。

歴史のあるこの雑誌、最近の人間はこの雑誌の存在さえしらない人が多いのではなかろうか。よく持ちこたえていると思う。また、これからもずっと続けてほしいと思うが、ちらほら廃刊の噂も漏れてくる。文芸雑誌「文学界」の同人誌批評欄も今年いっぱいでこの…

第51回群像新人文学賞、批評部門入選作、武田将明の「囲われない批評」

文芸批評家東浩紀の実験的作品「キャラクターズ、東浩紀+桜坂洋」を評論する、非常にメタ批評な作品が今回の群像新人文学賞批評部門で同世代の武田将明「囲われない批評」が入賞したが、この作品はおもしろいことに、東が自ら小説を書いて、その真髄を純文…

ペンネーム安西果歩さん救急車で運ばれ集中治療室に!

心臓にペースメーカーを入れ、一日強行スケジュールで毎日を休みなく駈けずり回っていた同人誌「サルベージュ」の実質的な編集者でもある彼女が6月5日倒れ救急車で病院に運ばれ集中治療室に入ったままいまだめんかいできないままでいる。まことに心配である。…

こちらの小説のほうが目的に適っている。

「ファントム、クォントム、序章」を読んでいると、またしても「新潮」10月号で別の東の小説を発見した。いかに私から「新潮」が遠く離れていたかということだ。おそらくこの奇妙なタイトルの実名小説が、「ファントム・・・」の動機になっている小説なのだ…

*タイトルの意味は序章だけではまだ掴めない。

小説内容がつかみやすいように、序章の構造を記しておく。語り手らしき一人称形式で二人の人物、「ぼく」と「わたし」が語る。全体は5節にわかれていてそんなに長くはない。「ぼく」は一節にのみ、あとの節は全部「わたし(女性)」で、読み進めるうちに「…

ゲイの中国人スパイのなれの果てのほうはどうなった?映画「M・バタフライ」

今月のUSENネット配信の映画「M・バタフライ」を久しぶりに鑑賞しました。1993年のクローネンバーグの作品です。この映画のラストシーンを今回わたしは、三島のあの自衛隊官舎での自殺とダブらせて観てしまいました。この映画のラスト、ジェレミー・アイ…

思想的に欲張りが「ガリバー」的になって大風呂敷な「序章」である。

毎月大手出版社の5大文芸誌「文学界」「すばる」「群像」「新潮」「文芸」には目を通すことにしているのだが、毎回なぜか「新潮」だけはあまり私の関心を引かない雑誌だった。しかし今回、その雑誌にガゼン注目したのには理由がある。東浩紀という名前だ。…

 文芸雑誌「新潮」は「別の世界」のメディアか?

かって、言論界の若き批評家東浩紀は、言論界の誰もが「のたまう」小説の死を、彼はかれなりの言葉でつぎのようにいう「僕にできることは、僕がすばらしいと信じるものが正当に評価される状況を作るべく、言説で多少とも世の中を変えていくことです。僕は、…

●映画「Bngkok Love Story」を観た。2007年タイの短編作品である。

今月から我が「文学関連」ブログに「映画」のカテゴリーを追加しました。いわゆる「ハリウッド映画」に限らず、マイナーな映画を発掘して、文芸時評の地平を広げていきたいと思います。ちょうど、昨今は、60年代の日本で「芸術映画」「作家映画」などと称し…

「芥川賞受賞作品を読む」というブログを立ち上げて、もうすぐ一年になる。弁解するつもりはもうとうないことだが、状況くらいはここにメモしておきたい。 芥川賞受賞作品は、今年の作品でおおよそ150作品くらいになるので作品数からいえばそれほど多くはな…

●久々に「映画」を楽しんで考えさせられた事。

映画からの感情移入は、おそらく誰もが経験済みのことと思うがとても強烈である。それは全身的と言おうか、人物と一体化してしまうほどの影響力がある。若い頃は、観た後のこの一体化の感情が一日中持続して、その映画に衝かれたような現実感の生の喪失状態…

●「サルベージュ」12号が発刊された。

「サルベージュ」12号が今年も発刊されました。内容は以下のとおりです。 小説の部1、「恋に恋して」(安西果歩) 2、「向日葵(ひまわり)」(夏祐子) 3、「青春の断章」(大杉隆士) 4、「朴散華(ほうさんげ)」(小橋菊江) 5、「タッちゃん」(…

●批評という行為

もちろん、書く行為、言語による表現行為のことである。言語が示す「行為」のことではありえない。このことは哲学的思弁をできるだけ思弁的心理の流れに沿って言語化を試みるのに似ている。これを敢えてことわるには理由がある。もとより小説に表現形式が存…

 ●かって「純文学とは何か」に言及した。

それについて、タイ在住の、自らも「言語藝」と称して小説を著し、日大文芸賞を受賞している白石氏から興味あるコメントがなされたので、ここでそのことに触れてみたい。彼のホームページはここです。 彼のいうとおり「純文学」と称する文学的場所は、非常に…

●「文学界」2月号、同人誌評の紹介。

「サルベージュ」11号の中の作品、2作「冬の夕焼」(小橋菊枝)と「ゆき筺(かたみ)」(瀧本由紀子)が批評されたので、その「文学界」2月号の内容を詳しく紹介する。同人誌評の今回の全体のタイトルは「驕慢、怠惰の陥穽」で、評者は松本徹(33年生…

●よかった、よかった!おめでとう!

やっと、「芥川賞受賞作品の読破」の合間に、恒例の雑誌「文学界」を再び読み始めたところであった。今年(2007年)一月号も、この二月号も初めに、まずは一通り目を通していたはずだった。しかし、それは大御所風で通過していた。細部はほとんど省いての通…

●理想の国家を創造したのは良いが、

筒井康隆風小説の異世界も、その裏には実際の現実、背景というものがあって、それがパロディのように、様々なレトリックを駆使して「妄想」される文体世界が、いかにその現実、その実態と乖離するか、この笙野の文体にもある。小説が、こうでもして描かれな…

●「無明長夜」(吉田知子)

「女性」という存在は、もうそれだけで、そのまま「マイノリティ」という特殊存在になってしまうようで、芥川賞受賞の女性作家どれを読んでも、これまでのところ、どこかそのままの実態が描かれていても、実に個人的不満が鬱積しているような気配はどの作品…

●「プレオー8の夜明け」(古山高麗雄)

芥川賞受賞作品としては珍しく、初の「ゲイ」の登場の作品である。メディア的表現の世界では、おそらく芥川賞始まって以来、小説という作品化の世界で主流として描かれた、そのすぐ傍で何やら正体不明の影の存在はずっとあり、それはその作家の主体性の主張…

●純文学とはなんだろう?

純文学とはなんだろう?という問いの答えがますます曖昧になり、一言で定義させることは容易な技ではなくなった。逆に、解りやすく、辞書のように簡潔に説明すればするほど、すっきりした答えは遠ざかるばかりである。日本近代文学成立いらい、何度も、「純…

●昭和44年下半期

「国家」という概念が強固に定着して久しいが、中国という国家にしてみればこのような小説は傍迷惑な話である。勝手に占領し我がもの顔で自国にしておいて、それをわが故郷とされ懐かしがられたのではたまったものではないということになるのだろうか。今現…

●読了予告

第六十一回芥川賞受賞作品「深い河」(田久保英夫)、昭和44年上半期。 第六十二回芥川賞受賞作品「アカシアの大連」(清岡卓行)、昭和44年下半期。 第六十三回芥川賞受賞作品「プレオー8の夜明け」(古山高麗雄)、昭和45年上半期。 第六十三回芥川賞受賞…