2007-01-01から1ヶ月間の記事一覧

●「冬の夕焼」(小橋菊江)

小説の形式や構造は、どれも皆よく似通っているということは「今この形式が表現の常套となっている」ということである。そういう意味ではみな誰もが同じスタートラインにいる、全国、プロアマ含めてみな同じレベルであると考えてよいといえそうだが、事はそ…

●「ダンスパーティーの夜だから」(大杉隆士)

ちょっと笑ってしまったが、作者は今回も引き続いて、社交ダンスの集まりでの男女の恋愛を執拗に追及しようとしているらしい。今回もまたそうである。映画「シャルウイ・ダンス」のあの主人公の中の燻った男の心理を、自分の中に見出そうと懸命らしい(笑)…

●「ゆき筐(かたみ)」(瀧本由紀子)

孫の代にまでわたる、あまりに長い年月を、これだけの紙片で顕すには難があったかもしれない。だから、歴史的箇条書きのようなものになって小説らしさがなくなってしまった。どこかの時点に焦点を絞って、そこにスポットを当て掘り下げて、祖母の言いたかっ…

●「バディ」(夏祐子)

まず始めに、「短歌」をものする人の言葉遣いが影響しているのだろうか?散文である小説の素地の文章に不自然なところが多々見受けられるのが気になる。また、確定した外国語(カタカナ)の固有名詞はそれを使用したい。例えば60年代に流行した「プロコルハ…

●「ダウト」(安在果歩)

●日常的な疑惑とは? 「疑惑」というのは、ミステリーなどでは、必ず解決がつくということになっているが、この小説「ダウト」では解決されないままで終わり、そういう意味ではどこかすっきりしない気分が残る。 日本語は英語に比べて、「動詞」中心の言語で…

●「虚光」(瑞乃木教)

●地の「私」と表現が自然に一致するよう、もっと「自己表出」に自信を持ってほしいものである。 そうでなくても読者は常に、主人公を作者と見たがる傾向がある。昨今の一般読者の考える小説とは、限りなく個人史のような、かっての私小説のような卑小化でリ…

●「君への贈り物」(西村由宇)

思わせぶりな冒頭は結局最終にも現れてこの場面が「今」なのだということが分かる、こういう創りはこの作者の構成力のすばらしさを物語っているわけなのだが、不倫を描いた小説としてはその途中が全てPCメールで覆われているのがちょっと軽すぎる。メールの…

●「氷ヵ岳」(コオリコ)

思いつくがままに感想する。わたしがこの作者に注目したいのは「文体」である。 このような筆致は最近では小説の常套的手法となっている。とりわけ若い書き手に多くみられるもので、これはほとんど言文一致が完成している手法である。たまたまわたしは今芥川…

●その心構えのようなもの。

全芥川賞受賞作品を読破する試みを始めました。動機は単純です。それほど「小説」読みな人間ではなかったわたしが、人生のセカンドライフを始めてから何故「小説」なのか考えてみるに、そこが「小説」の小説たる所以ではないかと選ばれたる理由なのですが、…

●芥川賞受賞作品を読む日々

●ネットでは限りなく本音の自分で しばらくネット社会の住民であることを降りていた。ブロバイダーとの契約が切れるとネット社会でもホームレスとなる。それでも、掲示板などには亡霊のように書き込む事はできるのだが、いかな匿名の蔓延る無責任なネット世…