2007-02-14から1日間の記事一覧

 ●第四十四回は、わたしの評では最悪の「忍ぶ川」(三浦哲郎)

小説を読んでいると、毎回異なるさまざまな人間の生き様に出会う。芥川賞小説の場合もそうであるが、読後感が、世間知的納得に流されない味わいがあるのが、ほかの賞の作品と違っているところであろう。同じ人生に見えてしまうものも、作者によって、その同…

 ●医者の視点で描く不気味な小説「夜と霧の隅で」(北杜夫)

医学部出身というのは、なぜかとても好奇心が旺盛なようで、あれこれと書いて見たくなるものらしい(笑)。 第四十二回の芥川賞は、受賞作なしであった。候補には川上宗薫やなだいなだ等が挙がっているが、見送ったようである。このところ、一つ飛びの受賞が…

 ●第四十一回の芥川賞は、なんと初めてのお年寄りの受賞である。

みなさま、斯波四郎(しばしろう)という作家をご存知でしたでしょうか? 第四十回は受賞作なし。昭和三十四年(1959年)上半期の四十一回目。わたし事で恐縮だが、その頃のわたしは、14歳で、外を知らない井の中の蛙であった。そのくせ、村落共同体の…

 ●小説は、自由でさまざまでよろしいのだが....。

一言で「小説」と言っても、読者という存在にとってはさまざまで、それを本という形にして自分の生活圏に取り入れてしまうと、もう我侭に、したい放題である。 読者にとって、その本とのつかの間の関係の時間は、その本の造られた「経緯」に対して信頼性、希…

 ●難しさはなぜ必要なのかを問う、大江の作品

第三十九回は、大江健三郎の「飼育」である。 大江健三郎の小説を読むとき、常に驚かされることは、単語、文節、文章という枠が、緻密に意識的に、その配列までが計算され尽くしたような選択行為の結果であり、成果だということが強く窺われることである。作…