2007-02-13から1日間の記事一覧

 ●第三十八回は、開高健の「裸の王様」

この後、大江健三郎の「飼育」が受賞することになるのだが、それによって、この時代、この開高と大江は流行作家の双璧となる。すでに、大江は開高受賞のおりに、候補作として「死者の奢り」が上がっているが、「裸の王様」に敗れている。開高28歳、大江25歳…

 ●第三十六回の受賞はなく、三十七回は「硫黄島」(菊村到)である。

短編で、こういう題材を描くには、もったいない、あるいは軽さに傾斜する危険性がある。それほどさように、この小説は様々な「死」的示唆を提供している。石原慎太郎の「太陽の季節」が出ても、戦争の傷跡は、いついかなるときにでもその顔を覗かすのである。…

 ●石原慎太郎の後は、第三十五回、「海人舟」(近藤啓太郎)。

第三十五回の芥川賞は、「海人舟」(近藤啓太郎)である。このタイトルは「あまぶね」と読ませるらしいが、わたしは、「うみ、人、ふね」と読みたい。そうするとこの小説全体を統一するように思えるからである。この作家もわたしには始めての人である。 三島…

● 芥川賞、この頃。

戦後の芥川賞は、権威的になり文藝春秋社という一企業の宣伝媒体となり、金の流れが文学の質を決定するような傾向になってしまった感がある。しかし、まあ、「懸賞」というシステム(もちろん芥川賞と公募賞の違いはあるが)がそのような内部を持っているか…

芥川賞このごろ!と第三十八回受賞作品