2007-02-12から1日間の記事一覧

 ● 第三十四回芥川賞、「太陽の季節」(石原慎太郎)

第三十四回芥川賞は、石原慎太郎の「太陽の季節」である。この受賞は、敗戦後からやっと十年たった、昭和三十年である。作者が学生の時、23歳、処女作「灰色の教室」から二作目の作品であった。これまでにあった「敗戦気分」はまったく無いのが特徴である。…

[文学関連、文芸時評」●選考委員だって人間だ、肉体は等しく加齢する

芥川賞開設当初から選考委員として参加していた川端康成などはもうすっかりくたびれたとみえて、「小説を批判する気持ちが減退するにつれて、その能力も減退してきたらしく、単純な読者になりつつあるようだ。最早委員には適任ではないのだろう」と告白して…

 ●なかでも出色は「白い人」(遠藤周作)だ!

安岡章太郎の後、現在知名度の高い作家が立て続けに登場する。吉行淳之助、小島信夫、庄野潤三、遠藤周作、石原慎太郎、開高健、大江健三郎である。読みも自然と休みなく、大江健三郎まで進んでしまったが、これらの作品は芥川賞の場合、短編か中篇なのです…

 ●安岡章太郎の「悪い仲間」と「陰気な愉しみ」

朝鮮半島の国は、今の日本にとって近くて遠い国などといわれている。それはおかしい。戦後61年も経ったからであろうか。かってその国を占領して、その民族性にも深く入り込み日本色統治をしたような日本が遠い国などとは決していえぬのは当然で、この言い…

●二十八回は、「喪神」(五味康祐)と「或る『小倉日記』伝」(松本清張)

昭和二十七年、第二十七回の芥川賞は受賞作なしであった。吉行淳之介や安岡章太郎、小島信夫などが見え隠れするが、受賞には至らないようだ。不思議に思うのだが、三島由紀夫、わたしはこの作家をずっと意識しているのだが、芥川賞選者の目に触れないのであ…