2007-02-11から1日間の記事一覧

 ●人の言語は「事実」を説明できるのか?(小説表現の虚構という真実)

「過去」の文学を読んでいて、現代文学では味わえない、大きな力が存在するのに気がつく。それは、その「小説」を「未来」から観ることができるという、当たり前といえば当たり前の話なんだけどね。このことはしかし、重要な示唆を与えるのである。作家によ…

 ●第二十六回は堀田善衛の二作品

安部公房の文体と小説の関係はおいおい語っていくことにして、次の受賞作品を読んでいく。 わたしには、あまり馴染みのなかった作家、堀田善衛である。しかし今回、彼の受賞作、「広場の孤独」、「漢奸」を読んで気がついた事は、芥川賞にはこれまでなかった…

 ●第二十五回(昭和26年)の作は「春の草」と「壁」

第二十五回の芥川賞は二作であった。「春の草」(石川利光)と「壁」(阿部公房)である。「春の草」が、従来の芥川色である、伝統と堅実を受け継いだ作風の作品で、新しい小説を模索するもう一方のこの賞の目的も適う「妙な」作風の「壁」とである。 敗戦後…